
3月に亡くなった父は日曜画家でもありました。実家の二階には父がアトリエ代わりに使っていた部屋があり、そこには存命中の父が愛用していたイーゼルが残されていました。買えば高いものらしいけれど、父の他には家族の誰も父と同じ趣味を持ちません。絵の具だらけのイーゼルを「買えば高いらしい」という理由と、やっぱり父の思い出の品と言う事もあり、捨てがたいまま実家の二階にすておかれていました。「お掃除の邪魔なのよ」なんて、母の愚痴も聞きました。それで居て「お父さんの思い出の品だからすてられないわ」とも言う母です。
絵を趣味にしている夫や私の知人の何人かに声をかけてもみたけれど、既にイーゼルを持っているという人や、欲しいけれど置き場所がない、とか運ぶ手段が、と理由はいろいろながら、適当な貰い手が見つからないまま過ぎました。
一週間くらい前の事です。帰宅するとうちの留守電に私の友達からメッセージが入っていました。
「イーゼルの貰い手が無くて困っているという話を思い出して、知人に話したら是非いただきたいという人が居るの。でも、その話を聞いたのが貴女からだったかどうか記憶が怪しいわ。違っていたらごめんなさいね。」と。
早速「その話をしたのは私」と答える電話をかけました。それからはとんとん拍子に話が進み、今日、息子さんの大型ワゴン車で初老の男性が実家へ取りに来てくれました。在りし日の父と同じようにお仕事の傍ら、絵を趣味にしているというその方は実家にかかっていた父の絵数点だけではなく、母が織った佐賀錦のバッグや草履まで見ていってくれました。
母も「良い方に貰っていただけて」と喜んでいました。みんなが父からのクリスマスプレゼントを貰えたようなイブになりました。
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